次世代工法「金型レス生産」で高精度な金属加工を実現
世界トップレベルの最新加工設備と、長年にわたる精密板金・プレス加工の経験で培った技術ノウハウの融合により、次世代生産工法「金型レス生産」を確立。近年は、異業種連携により設計から加工まで、あらゆる生産プロセスについてワンストップで対応可能な体制を構築している。
株式会社クラフテックオカモト(R1/10/16up)
スピーディかつ高精度な金型レス生産
従来のプレスに必須とされてきた金型を作らず、スピーディで精度の高い薄型板金、プレス加工を可能とする金型レス生産。初期投資・生産費用を大幅に圧縮し、翌日には製品そのものが出来上がる。設計変更にもフレキシブルに対応ができるため、メーカーの開発・設計部門から注目を集めている。
初期投資・生産費用の圧縮、納期短縮に寄与
-御社の事業内容を教えてください。
鉄やSUS、アルミなど薄型板金、プレス加工を得意としていますが、さらに溶接、組立にまで対応しています。主要取引先は、OA機器、医療機器、電気機械の大手メーカーなど、高精度な金属部品の納入が求められる企業様ばかり。幣社では、その要求に応えることができる「金型レス生産」という手法を用い、多品種少量生産に対応している点を強みにしています。
この金型レス生産は、従来のプレスに必須とされてきた金型を作らない手法で、初期投資・生産費用の圧縮、納期短縮といった付加価値を提供することが可能となっています。例えば、従来の手法では、社内で金型をひとつ作るのに、40日から2か月ほど必要で、その費用も数百万円レベルとなっていました。ところが金型レス生産であれば、翌日には製品そのものが出来上がり、しかも金型代が不要となるため、製品単価に反映せずに済みます。
また、設計変更にもフレキシブルに対応ができるため、メーカーの開発・設計部門から量産試作の依頼も多くなっています。

高精度の金属部品を製造
他社に類を見ない世界トップレベルの設備
-積極的に設備投資を行っているとお聞きしていますが。
量産性も備えた高精度加工を可能としているのは、世界トップレベルの設備と、それらを巧みに使いこなすオペレータのマネジメント力であると自負しています。私たちが、一般的な“プレス屋”というイメージから脱却し、現在のような総合加工業へと事業スタイルをシフトしたのは、今から15年前のことでした。量産小物を得意としていたので、その経験を生かし多品種少量生産へと舵を切りました。
参入した時点ではどうしても後発になるため、同業他社との差別化をはかるために、世界トップレベルの設備を導入しようと考えました。そこで選択したのが、まだ当時の日本では珍しかったドイツのトルンプ社の機械です。現在までに、位置決め精度±0.10mm、繰り返し精度±0.03mmを実現する高速パンチング・レーザー複合加工機やハイブリッドベンダー加工機、ロボットベンダーはもちろん、小物部品の測定が瞬時に行える画像寸法測定器などを導入しています。恐らく、大手の同業でも見られない台数、規模の設備を取り揃えていると自負しています。

トルンプ社の高速パンチング・レーザー複合加工機
弊社はもともと精密板金業ではありませんでしたが、精密量産プレスの経験は豊富にあったので、同業の板金工場にはないノウハウや基本的なマネジメント力がありました。それはメイン顧客だった大手複写機メーカーの指導を長年に渡り受けてきた成果といえます。そのため、技術要求レベルの高い絞り加工やR曲げ加工まで対応可能となり、抜き・曲げ加工の公差0.05mmを実現するに至っています。
パートナーシップと5S活動の強化で企業価値を向上
-近年、注力されている事業について教えてください。
平成30年に、テクノロジーとクラフトマンシップを融合した造語「クラフテック」という言葉を据えて社名を変更し、さらに対応可能な領域の拡大を目指しています。従来の加工のみならず、デザイン会社との提携により、設計・デザインといった上流工程からの提案も可能となりました。また、塗装や組立などを専業とするグループ会社とも関係性を密にし、互いにシナジー効果を高めながら、設計から組み立てまで、ワンストップで対応できる体制を確立しました。
私自身、この業界で長く仕事をしてきて、生き残る術の一つに、この企業間のパートナーシップがあると感じています。経営者が互いに信頼ができて、コストも補完しあえる関係が重要だと考えています。自社努力で事業を拡大していくのも選択肢の一つではありますが、やはりリスクを伴います。これまでは“下請け”“お得意先”というカテゴリーで捉えていた関係者を、新たに“ビジネス・パートナー”として見直してみることで、非常に力強く頼りになるチームができると実感しています。

あらゆる生産プロセスにワンストップで対応
また、製造業としては当たり前のことではありますが、徹底した5Sおよび改善活動にも注力しています。生産管理のQCDを徹底することで、高精度な要求、納期対応に応えることができるのは間違いありません。私自身も中小企業で育ってきた人間なので、正直言って、このような活動は苦手な部分がありました。しかし、世界的に見ても成功している最新鋭の工場では5Sが非常に行き届いています。“高精度や納期要求に応えるため”という目的がそこにあることを理解すると、我々中小企業にも必要な活動であることが理解できます。それを従業員に納得してもらうためには、明確な目標値と達成感を設定する必要があるため、そこに経営者としてのエネルギーを注ぎ込んでいます。

高精度・高品質を維持する従業員の意識
時代を読み、時には大胆な戦略で挑む
-今後の展望を教えてください。
日本の景況感は相変わらず不透明な状況が続くと思いますが、弊社が得意としている多品種少量生産という領域にはまだ需要があると思いますし、弊社がそれを勝ち取ることも可能だと思っています。我々がこれまで培ってきた高度な生産技術を提供しながら、今後も同業・異業、大手・新興の区別なく、あらゆる企業様の期待に柔軟にお応えしていければと思っています。
現時点では、急激な規模の拡大は考えていません。現在の80人体制で、10億円を売上げ、そして純利益を1億円確保するのが理想だと考えています。そのためには、常に最新設備を導入し、順次入れ替えていくべきだと考えています。そして当然のことながら、人材の適材適所な配置が大切ですから、組織的なマネジメントにも注力していきます。
展示会において他社の人が羨望のまなざしを向けるような機械は、ほとんど弊社に揃っています。私たちのような規模の会社が算盤をはじいていたら、高い設備を購入することは難しいでしょう。常に先を読み、時には思い切った判断をし、そして助成金を活用しながら設備を揃えていくことで、これからの時代を乗り切っていきたいですね。

代表取締役 岡本 太郎氏
取材:令和元年7月26日
企業基本情報
会社名 | 株式会社クラフテックオカモト(R1/10/16up) |
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所在地 | 〒208-0023 東京都武蔵村山市伊奈平1-71-1 |
設立 | 1947年 |
資本金 | 4,000万円 |
従業員数 | 60名 |
主要取引先 | OA機器、医療機器、電気機械メーカー等 |
WEBサイト | http://www.craftec-ok.com |