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自動化・IT化で鋳造の限界を超える

職人の“腕”と“勘”に頼る部分の多かった鋳造の世界において、自動化・機械化という概念を持ち込んだ「Vプロセス」。その画期的な工法は、品質の安定化や効率化に加え、切削加工やダイキャストに迫る繊細な造形をも可能にした。

(株)栄鋳造所

切削・ダイキャストの品質に迫る鋳造工法「Vプロセス」

創業は1952年。自動車のシート成型用の金型製作をメインに事業を展開してきたアルミ鋳造メーカー。1995年より圧造形鋳造法(Vプロセス法)の導入を開始し、その後も3次元CAD・CAMや大型3次元モデル加工機を導入するなど、意欲的に技術開発と業務拡張を推進。現在は2台のVプロセスプラントが稼働している。

作業風景

作業風景

鋳造の概念を覆す造形精度と効率的な製造が可能

鋳物業界において「今世紀最大の発明」と評価された「Vプロセス工法」。この工法は、砂の詰め具合などに熟練の技術が要求される従来の工法に比べ、容易で高品質、高効率な製造が可能となる。

Vプロセスの“V”はVacuumeの略だが、その名の通り、原型と砂を真空パックにするという工法。原型にフィルムを吸着させて型を取るので、繊細・複雑な形状や鋭角なフォルムでも忠実に転写することが可能。その後の砂入れも真空パックの要領で砂を固めるだけなので非常に容易。溶解した金属を注入し、冷却が済んだら、あとはそのパックを破るだけで簡単に製品が取り出せる上、砂の再利用も可能だ。また、Vプロセスは、1800ミリ×1500ミリの面積で一気に鋳造を行うので、多数・多品種の製造を効率的良く製造できるというメリットもある。

栄鋳造所では、このVプロセス工法をベースに独自の技術も開発。溶解した金属を流し込む際の工夫で気泡(ピンホール)の抑制をするほか、フィルム面に特殊な塗材を加えることで滑らかな鋳肌を出すことにも成功した。

Vプロセス工法が生み出す複雑・繊細な造形と優れた寸法精度は、切削加工やダイキャストの品質に迫る。すでに、半導体部品や医療機器部品などにVプロセスを活用するケースも生まれているという。

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パイプ鋳込みや3Dプリンターでの鋳型製造など新技術を開発

栄鋳造所では、Vプロセスとあらたな技術を組み合わせることで、鋳造技術の可能性を追求している。その代表例が、鋳物の中にパイプを鋳込む技術だ。

アルミの中にステンレスのパイプを鋳込むというケースはこれまでもあったが、栄鋳造所では、パイプの周囲を埋めるアルミの厚さが1ミリ(機械加工後は0.5~0.8mm)という難加工の技術も確立。そこにはVプロセスの恩恵以外にも、パイプの処理・固定法や鋳造時の注湯法といった独自の技術が生かされている。また、この技術を進化させることで、薄肉かつ複雑形状なアルミ鋳物の中に同金属のアルミのパイプを鋳込むという、通常であれば不可能な加工にも成功。こういった技術は、水冷式冷却パネル製造などの分野での活用が期待されている。

 栄鋳造所では「鋳造のIT化」も推進している。その第一歩が、原型(マスターモデル)のかわりに製品の3D設計データを使用する「マスターモデルレス工法」。製品データに基づき、鋳型を3Dで設計し、3Dプリンターで鋳型の現物を出力するという工法だ。「マスターモデルレス工法」のメリットは、なんといっても工期の短縮。木型の制作だけで3カ月を要する案件を、わずか2週間で対応した実績もあるという。量産には不向きだが、短期間で何度も試行錯誤ができるということを考えると、ダイキャスト製造に向けた試作品の製作などには最適だろう。また、3Dデータなので拡大縮小が容易であり、変更個所などもデータ上で出来るということも利点だ。

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「IT化により、技術の標準化と新技術・新サービスの開発を推進」

代表取締役 鈴木隆史さま

代表取締役 鈴木隆史さま

今後の展望について

「熟練技術の技術者の高齢化に伴い、技術の継承が問題となっていますが、IT化によってこの問題に対応したいと思っています。 “腕”だけに頼るのではなく 、もっと“頭”を活用できる体制・手法を構築することで、若い人や女性でも従事できる鋳物会社を目指したい。今後も自社に見合った鋳造工程のシミュレーションシステムを導入するなど、職人の“勘”に依存しない製造プロセスの開発を進めていく予定です。ほかにも、WEBサイトからの24時間見積もり受付対応や、オンラインでの受注システムなども構想しています。

技術開発においては、特許などにはこだわらず、そこにかける時間やコストを開発予算に回し、常に業界の先頭を走り続けることが大事だと考えています。」

 

海外進出について

「欧米とアジアを視察した結果を踏まえ、2013年より海外市場への進出を本格化させます。ヨーロッパにおいては、当社と同規模の鋳造会社とのアライアンスを結ぶ予定。アメリカは、私たち自身がマーケットに進出していきたい。アジアに関しては、技術供与というカタチで関わっていこうと思っています。現在、ミャンマー人の社員がいますが、彼が技術を学び、母国で起業することを支援したい。そういった関係が、やがて太いパイプとなり、未来のビジネスチャンスにつながればいいと思っています。

これは海外も国内も同じですが、中小規模の企業が連携して大きな群れを作ることで、大企業や市場に対するアピール力や発言力を強めていきたい。そうすることで、きっと新たな需要や資本の投下などが生まれると信じています。」

 

取材:2014年1月

企業基本情報

会社名 (株)栄鋳造所
所在地 〒192-0154 東京都 八王子市 下恩方町350
設立 昭和24年
資本金 1,000万円
従業員数 28名
主要取引先
WEBサイト http://www.sakae-v.com/