低消費電力の電界放射型X線管。
過熱することなく電子を取り出すことのできる電界放出電子材料を用いて、世界で初めて市販レベルの「小型かつ低消費電力の電界放射型X(エックス)線管」の制作に成功しました。
(株)鬼塚硝子
硝子加工技術の先端
■封じ切り炭酸ガスレーザー
鬼塚硝子が培ってきた匠の技(硝子加工技術)にサイエンスを融合し、自社製品としてついに完成した「封じ切り炭酸ガスレーザー」
■超精密ガラス加工
高速立形加工機により、単結晶シリコン、ファインセラミックス、石英ガラスなどの難削材から焼き入れ鋼、スポンジ、発泡スチロール、木材まで、高品位な微細加工が可能。
■電界放射型X線管(世界初)
無過熱で電子を取り出す電界放出電子材料を用いることで、世界で初めて小型・低消費電力を可能にした電界放射型X線管。
最先端か、神業か、芸術か。
夢と努力が生んだ自社製品「封じ切り炭酸ガスレーザー」
長年の夢と努力の結晶ともいえる「封じ切り炭酸ガスレーザー」は、鬼塚硝子が休まずに追い求めた自信の自社製品です。硝子の先端製品は、たんなる硝子加工だけではつくれません。そこに新しい機能を付加しようとすれば、どうしてもサイエンスが必要になります。独自のレーザーから生まれた硝子加工品に、鬼塚硝子だけが成功した「5面一体成型試験管」があります。これは光を通す血液分析用の試験管ですが、完成までにはプレス加工、電気方式、ガス燃焼方式など、あらゆる加工に関わる科学が活かされており、研究室長としてドクター(工学博士)が存在する理由を教えられます。「封じ切り炭酸ガスレーザー」は現在、医療機器、理化学器、半導体加工機など幅広い分野で利用され、さらに活躍の分野を広げようとしています。
超精密硝子加工においても、他の追随を許さない特異な加工技術をもって驚嘆の出来栄えを見せてくれます。工房ともいえる製作所からは、精密を極めた金属のようなネジ切りなどのほか、信じられない形状の硝子製品が生み出され、さまざまな加工機、独自の加工法、そして長年にわたって蓄積した技術が随所で駆使されています。それらは、硝子の加工の容易さ、機密性の高さ、光の透過性の良さなどの特性が、硝子を知りつくした匠の手と優れた加工装置によって十分に引き出され、今日も多くの場で利用されています。
さらに深化するサイエンスと匠の融合。
鬼塚硝子には、“世界初”の製品があります。日本はもとより、世界でも鬼塚硝子の名を高めることになった「電界放射型X線管」です。レントゲン写真は多くの人になじみがありますが、その写真の撮影などに利用されるX線発生管(X線管)は、電球の中で光るフィラメントと呼ばれる部分とX線を発生させる金属部分(X線ターゲット)から構成されます。X線を得るには、フィラメントを強熱して電子を放出させ、その電子を電気の力で加速させた後、X線発生ターゲットに衝突させなければなりません。近年、フィラメントを用いた電球は、主に消費電力の大きさから全廃の方向に進んでいますが、いまだにフィラメントが使用されているX線管においても消費電力の大きさに画期的な改良が求められていました。この問題に着目した鬼塚硝子は、“過熱することなく電子を取り出すことのできる電界放出電子材料”を用いることで、市販レベルの小型かつ低消費電力の電界放射型X線管の制作に挑み、業界が納得する水準を有した製品の開発に成功。この世界初の成果は、サイエンスと匠の技の、みごとな融合を見せつけ、鬼塚硝子の力が最大限に発揮された製品を誕生させることになりました。
たゆまぬ研究と、幅広い交流。
研究室室長 工学博士 中村智宣さま
当社では、「サイエンスと匠の技の融合」をさらに進めるるべく、新たな部門として研究室を設置しています。この室の使命は、サイエンスを紐とき、匠の技を取り込み、これを融合し、社会貢献を果たす製品群を生み出すことです。当社の研究は多岐にわたりますが、“たゆまぬ研究こそ命”とこころえ、時代のニーズを探りながら1つひとつの研究に道を拓いていけたら幸せです。また、さまざまな分野の方々からご相談や共同研究などのご提案をいただければ、持てる技術と知恵を精一杯捧げる所存です。研究室のメンバーの一同が切磋琢磨し、研究力の向上に努め、幅広い分野で社会貢献を果たしていきたいと思っております。
先端技術を駆使する次代の硝子屋として。
当社の特徴は「サイエンスと匠の融合」です。真空中で金属と硝子が完全に密着したこの真空管を見てください。ここには、先端の溶接技術など、小さな巨人(サイエンスと技術と匠)がいっぱい活躍しています。たとえば熱、つまり金属の膨張係数の問題があり、これに硝子が合わないと割れてしまいます。本来は金属屋さんがやるべきですが、ベリリュームとステンレスのろう付け、シリコンと硝子を電気的にイオン交換してくっつけるなど、総合力がないと不可能な製品の代表です。これが鬼塚硝子が、鬼塚硝子であることのあかしです。
プラスチックならできるのに硝子ではできないのか。製造ラインに入ったとき作りやすい設計でなければ。そんな内外の声の一つひとつを真摯に受け止めながら、私は40余年の道のりをひたすら歩んできました。花瓶など硝子は受身の素材ですが、加工に何かをプラスすると硝子は能動性を持ちます。その“何か”のために、いま当社のような中小企業にも、最先端の知識と知恵を注ぐ工学博士が活躍しています。もちろんその隣では、長い間硝子加工に取り組むことで匠の技を持つようになった職人が腕をふるっています。
そんな当社では、今日も“先端技術を駆使する次代の硝子屋”として、さまざまな試みが続けられています。(ひとつを明かせば、ナイロンやペットなどの繊維を瞬間的かつ均一に過熱することができ、極細で高強度な繊維に加工できる「CO2レーザー延伸技術」の次の展開など)。今後、挑戦の日々から生まれる成果に光が当たるのは環境分野、医療・医薬分野、それとも農業分野なのか。私自身が、そのNEXTONEを楽しみにしています。ご意見、ご指導を、何卒よろしくお願いいたします。
取材:2010年1月
企業基本情報
会社名 | (株)鬼塚硝子 |
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所在地 | 〒198-0023 東京都 青梅市 今井3-9-18 |
設立 | 昭和42年 |
資本金 | 2,000万円 |
従業員数 | 40名 |
主要取引先 | 大手メーカー(工場) |
WEBサイト | http://www.onizca.co.jp |