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現場でリアルタイムに質量分析ができる「質量分析装置(ポータブルIAMS)」

現場に持ち込める小型サイズで、リアルタイムに質量分析ができる「質量分析装置(ポータブルIAMS)」を発売。大手が参入しないニッチな分野で、長年培った真空成膜・分析技術を活かしている。現場の「今」の状況を知るツールとして、環境・医療等の幅広い分野での活用が期待される。

株式会社C&Vテクニクス(H29/12/26up)

67歳で起業!シニア世代の技術を次の世代に伝えたい

前職で培った真空成膜・分析技術を活かし、67歳でC&Vテクニクスを創業。日本の技術力低下が叫ばれるなか、技術を持った人たちの定年退職が問題になっている。シニア世代の技術を次の世代に残すため、自ら会社を興し、真空成膜と質量分析装置事業でビジネスの最前線に立つ。

ポータブルIAMSと一緒に

真空成膜・分析技術を活かして67歳で起業

―御社の事業内容を教えていただけますか。

 

私どもの会社では、主に2つのビジネスを展開しています。1つ目は真空中で薄膜を付ける成膜事業、2つ目は同じく真空技術を応用した質量分析装置です。

学校を卒業してから、1970年に当時の日本電気と米国のバリアン社が作った日電バリアンという合弁会社に入社しました。それから会社名は何度か変わり、最後はキヤノンに事業売却されましたので、現在はキヤノンアネルバという社名になっています。その会社で約40年間成膜と分析技術を扱っていたので、その技術を生かして退職後に当社を起業しました。67歳のときでした。

代表取締役 鵜飼 勝三氏

代表取締役 鵜飼 勝三氏

―67歳での起業は、かなりご苦労もあったのでは。

 

そうですね。ただ、最近は高齢化社会になってきて、60歳を過ぎても元気ですよ。私が入社したころの60歳というとだいぶ体力的にも弱っていたように思いますが、今は違います。企業をリタイアする方々はいろんな技術を持っているので、その技術を埋没させてしまうのももったいない、次の世代に残していきたい、という想いで起業しましたから、年齢のことは当時考えていなかったですね。

定年退職したものの仕事を辞めた実感がなかったので、家でゴロゴロしているのが耐えられませんでした。そこで、いくつかの企業のお手伝いをしていましたが、最後にお手伝いした会社が大きな受注を抱えたまま倒産したものですから、お客様にご迷惑をおかけしてはいけないということで、納品した装置のサポートを引き継ぐ形で作ったのが当社です。年齢のことを考えている暇がなかったというのも事実です。

 

―インキュベーションオフィス・TAMAに入居されたきっかけを教えてください。

 

起業直後は自宅を事務所にしていたのですが、お客様に来ていただくにも困りますから、すぐに事務所を探し始めました。ものづくり企業向けのインキュベーション施設なので広めですし、完全個室で隣の会話を気にすることがありません。また、自宅からも近かったので、こちらに申し込みました。2018年1月でちょうど入居5年になりますので、いよいよ卒業です。

社内の様子

社内の様子

自由な形状のフィルムに真空成膜できるロールコーター

―ロールコーターとはどういった装置でしょうか。

 

プラスチックフィルムや金属フィルム等に連続的に表面処理する装置の総称で、弊社のロールコーターは真空成膜処理を施すものです。通常の半導体で用いるシリコンウエハーは丸ですが、当社のロールコーターでは様々な形状のフィルムへの成膜ができます。これからは省エネがより重視されるでしょうから、太陽電池やフレキシブルディスプレイを考えたときに、形状が自由で柔軟性があるフィルムが必要になると思い事業化しました。

ところが、電子デバイス用の装置は受注の有無の波が大きく、しばらく注文ゼロが続きました。安定した売上の基盤を作りたいと思って開発したのが、質量分析装置です。設備投資の波が来ればチャンスがありますので、ロールコーターも継続していくつもりです。

 

ロールコーター CVRシリーズ

ロールコーター CVRシリーズ

 

現場でリアルタイムに多成分物質の同時質量分析ができるポータブルIAMS

―質量分析装置(ポータブルIAMS)はどういったものでしょうか。

 

従来方式(例えばEIMS)に比べて、小型で持ち運びができ、前処理なしにリアルタイムな計測ができるイオン付着質量分析装置1)(ポータブルIAMS)です。従来と何が異なるかというと、イオン化の方式が異なります。

EIMSという方式では、試料に電子ビームを衝突させてイオン化させます。電子ビームから受けた衝撃で分子内の結合が壊れ、フラグメント化を起こし複数のスペクトルとして計測されるので、どれがその物質のピークなのかが分かりづらくなってしまいます。

それに対してIAMSという方式では、真空中で加熱して発生させたリチウムイオンを物質に付着させることによってイオン化しますが、この場合エネルギーは小さいためフラグメント化しません。ですから、単純に計測したい物質の質量に、リチウムの質量をプラスした形でスペクトルが検出できるので、測定物質を同定しやすいのです。

また、従来の分析方式では、試料をサンプリングして装置のある場所に持っていき、前処理を施して計測するまでに、丸一日がかりということもあります。環境の変化によってピークが変わるはずなので、リアルタイムで計測したいはずなのですが、従来法ではそれができないのです。当社の質量分析装置では、装置自体が小型なので好きな場所に設置できますし、前処理がいらず常時ガスを吸引して時々刻々と測定することができるので、今現在の安全性を確認できます。

 

脚注1):イオン付着質量分析法(Ion Attachment Mass Spectrometry: 略称IAMS)は日本発の新機軸の基盤・要素技術を持った世界標準となる質量分析法です。 この分析方法による分析装置をイオン付着質量分析装置と称す。

従来法との比較

従来法との比較

 

―質量分析装置(ポータブルIAMS)を開発したきっかけを教えてください。

 

前職のキヤノンアネルバで同様の装置を開発していたのですが、事業撤退してしまった経緯があります。たまたま別件でお会いしたお客様から「キヤノンアネルバのIAMSが欲しいのに、撤退してしまった」というお話をうかがいました。ニーズがあるのに製品がないのは困ると思い、ものづくり補助金を活用して開発に取り組んだのがきっかけです。

環境や医療分野での活用に期待

―どのような用途を想定されていますか。

 

環境面での利用に加えて、呼気分析で病気の症状を見る研究が進んでいますので、医療分野への応用を考えています。現在は、非常に小型のハンディ呼気分析器が発売されていますが、これは特定の物質に反応するもので、他の物質は検出できません。症状が判っていれば、特定の物質濃度だけを検出すればいいのですが、様々な症状に付随して呼気の成分も変わりますから、呼気に含まれる成分を同時に計測できたほうがいいでしょう。低侵襲の治療が望まれる時代なので、現在の血液検査に代わって、呼気検査が行われるようになるかもしれません。血液検査で1時間待たされていたのが、呼気検査ならその場で結果が出ます。

また、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テロ対策にも活用できます。万が一テロが発生した場合は、使用された化学物質を即座に特定しなければいけません。現場に装置を持って行き、リアルタイムで成分を確認できれば、素早い対策ができます。

 

―今後の展望を教えてください。

 

当初考えていたよりも質量分析装置(ポータブルIAMS)が広がりを見せており、いかに迅速に要求に応じられる生産体制を構築するかが課題になっています。

分析装置や医療機器の市場は海外の方が規模と成長性ではるかに大きいので、できるだけ早い時期に海外へ進出したいと考えています。まずは新しい技術を受け入れる土壌のあるアメリカを狙いますが、今後の需要の伸びを考慮すると中国や東南アジアへの進出も視野に入れていきたいと考えています。

 

取材:平成29年10月25日

 

企業基本情報

会社名 株式会社C&Vテクニクス(H29/12/26up)
所在地 〒190-0013 東京都立川市富士見町5-3-17【平成30年1月30日に移転しました】
設立 平成24年
資本金 100万円
従業員数 2名
主要取引先 国立研究開発法人産業技術総合研究所、東京理科大学、電子デバイス関連企業等
WEBサイト http://c-vtechnix.com